とけないこおり

好きなものへの気持ちを素直に

#自選10短歌集2022 No.31(選出意図、小話、背景など)

昨年に引き続き、鷹野さん主催の自選10短歌集2022に参加しております。

短歌の音数と同じ31番目に掲載されています。

【アイドル好き・アイドル短歌好き59名による580首の短歌集】 #自選10短歌集2022|鷹野|note

 

この記事では選んだ作品の制作背景とかをぽつぽつと。画像にしてツイートしようとしたら長くなってしまったのでブログの記事にしちゃいました。

 

【フォントと文字色】

画像の作成にあたっては、ゴシック体、煤色で依頼させていただきました。

今年の歌を並べた時に、2021で選んだ明朝体ほどしっとりしていないなあと思ったのでちょっとだけフランクそうなゴシック体に。

煤色はカラーコードが「#887f7a」…887が入っているという理由だけでこれにしています。自分の短歌の色味がよくわかっていないこともあり、ニュートラルな色調を求めているので結構しっくりきています。7MEN侍は煤けた雨も飲んでいますし…(読者のみなさんからは私の歌、何色に見えているんだろう?)

 

【解説とか、作った時の気持ちとか】

最近あまり解説とかしてこなかったので文章が冗長になってしまった。

5首目までがアイドル短歌、6首目以降は短歌です。

出典の後の(日付)はおおよその公開日です。

 

①RGB(0,0,0)の部屋にいて光の隙間と握手をした日

アイドル短歌25のお題 「17.名前」より(8/10)

自担の矢花くんの誕生日に作ってみた連作から1首。「黎」という素敵なお名前をお持ちなので、そこから連想される要素を詰め込んでつくりました。「黎い(くろ・い)」「黎明」「ray」……。色の三原色の中での黒=RGB(0,0,0)に支配された場所に光線(ray)が入ってきて、夜明け(黎明)がきて、箱、枠の外へ出ていくパワーそのものその瞬間を詠みました。光はメンバーカラーの白色のイメージ。色の三原色との対比。

矢花くん自身の思考を表に出して影響を与えていく様子であり/彼の世界をもっと理解したくて今までいかなかったような場所、見たことのないものを見てみようとする知識欲の深いファンの様子でもあり、どちらにも捉えられる歌です。(作った時は前者のイメージでした)

 

②だらしなくても大丈夫のお言葉に甘えて足の踏み場もない部屋

アイドル短歌25のお題 「12.甘い」より(8/10)

こちらも先程の連作から。甘い言葉とか甘い夢とか、ピンクでふわふわとした世界観が自分の作歌領域になく、結構悩んだお題でした。恋愛的な甘さは排除したいなあなどと考えていたら自担の言葉に甘える結果となりました。とある雑誌の発言「だらしなくて大丈夫です。僕もだらしないから。」がベース。もちろんこの歌を作った時の作業スペースも床もぐっちゃぐちゃでした。甘いというお題からは想像できないくらいガサツな歌をつくれて嬉しかった。

 

③予想外だらけの思考に触れていま裾野を広げる音(ね)が鳴る夜明け

NHK短歌テキスト はがき歌コーナー テーマ「憧れの人」より(9月号掲載)

テキスト内の読者コーナーに投稿し掲載されたもの。せっかくNHK短歌に自担が出ているので送ってみるか~と思って作った歌です。ギリギリギリギリ納得いくまで作っていたらド平日なのに朝3時くらいになっていた記憶。ことばの派手さに寄りかかっているところに深夜テンションがにじみ出てちょっと恥ずかしい。テキストには同じ侍担の方も掲載されていて、お近づきになれたことも含めて嬉しかったです。

矢花くんのおかげで、聞こえなかったベースの音が聞こえるようになり、触れてこなかったジャンルの曲に触れ、いったことのないライブハウスに飛び込んでいきました。推しのおかげで自分の世界が広がるなんてこんな楽しいことはない。紛れもない「ありがとうの歌」です。

 

④知りたいな君の視覚のイコライザ 冬を雪では描かぬ周波

#j31gate 第23回 テーマ:「雪」より(2/5)

矢花さんは過去に公式ブログで「普通であること」に関する投稿をしていました。その中で例として「(矢花さんは)冬を表現するのに雪や寒いといった言葉は使わない」という話をしており、じゃあ彼が表現する冬ってどんな景色なんだろう、見てみたいという気持ちを詠んだものです。また個人的に「雪」という漢字、シンボルに思い入れがあるので、直接的なシンボルを表現物に含めることで、人の胸を打ちやすくなったりある程度自分の表現意図を伝えやすくなるメリットもあるのにな…という寂しさもあってこのような歌を詠んだところもあります。

イコライザも周波も本来は聴覚のために存在している言葉ですが、音を含めたほうが詠む対象の個性がにじみ出るかなと思い、視覚領域を表現する単語としてあえて持ってきています。

 

⑤チケットを紙切れにした疫病をにらむ祈祷師ペンライト振る

推しと短歌(講師:榊原紘さん)講義内の課題提出歌(5月下旬)

NHK短歌がはじまり、短歌を基礎からしっかりやるぞと考えていた時期に、本短歌集主催の鷹野さんがRTされていたWEBカルチャースクールに参加。そのときの課題で提出したものです。この時期は応援しているグループの春コンサートの一部が中止となり、やり場のない感情を抱えていたため、どうせなら歌に昇華してしまおうと思い作品に仕上げました。

「悲劇と喜劇は際まで行くと見わけがつかない、笑ってしまうようなことは深刻なことでもある、逆もしかり」「短歌では共感と驚きがいい歌を作るといわれるが、これは共感の歌である、出る場によって票数が変わる歌」と講評でおっしゃっていただいたのが印象的だった歌です。WEB開催ではあるけれど、初めて歌会に出した歌でもあります。

 

⑥アナウンス『遅れて申し訳ございません』を言うな、君、悪くない

普通にツイートした短歌(1/3)

仕事始めの前日に田舎から都会に戻ってきて、心がだんだん都会になじむようにかたくなっていくときに、地下鉄のホームできこえてきたアナウンスから詠みました。めっちゃ謝られるけど大抵どうしようもないこととか鉄道会社さんは悪くないってことばかりだから、なんだかなあ…って思ったんだろうな。新年早々。

 

⑦音楽が芽吹く場所には出会いあり となりの君と歌い合う明日

結婚式で渡したフォトアルバムに書き添えた短歌(8/11)

「お・め・で・と・う」の折句。おそらくこの時は「せっかくだし折句やってみようモード」。吹奏楽部の同期同士の結婚で、本来式場で演奏する予定がコロナ禍でできなくなってしまった結果、フォトアルバムにメッセージを書いて贈ることになったんですよね。せめてこの歌の中では音を重ねることができれば…と考えながら詠んだ歌。

 

⑧降伏の上に成り立つ幸福の日向でしっぽを追いかける犬

NHK短歌 投稿歌 佐佐木定綱先生 題:「降」(テキスト11月号掲載)

昨年投稿した中で唯一佳作で掲載された歌。NHK短歌の投稿者層の厚さ(多さ)を思い知った歌でもある。(わたしは100本くらいつくってやっと佳作が1本でるのか…とやや気が遠くなった 語彙がないのは自覚している)

題なので「降」という漢字を詠みこむ必要があり、降るとか降りるとかでうまく思い浮かばず…「コウフク」の同音異義語だとコントラストが出て面白いなあと感じて「降伏・幸福」の両方を詠みこむことに決め、組み立てていきました。犬の様子を服従の象徴ととるか、のどかな風景ととるかでトーンが変わる歌でもあります。

 

⑨左薬指が寂しいと言うのでランドルト環をはめてあげます

普通にツイートした短歌(1/25)

インスタを開けば誰かが結婚し誰かが出産し、LINEの表示名の苗字は変わりアイコンが赤ん坊になる年頃です。私は周りの友人がまだ結婚していないからなにも焦っていなくて今が楽しいけれど、SNSは世間の普通を突き付けられている感じがしてしんどいこともある。だからこそ、私はだれよりも私を信用して自分に指輪をはめてあげていたいのです。ランドルト環はフリーリングみたいな形で大きさも色々あるし、世の中の見通しがよくなりそうだからすき。

 

⑩ステーキを食うぞ忘れろつらいこと 今日の私はおジャ魔女どれみ

普通にツイートした短歌(2/6)

フォロワーのことを頭の片隅におきながら詠んだ歌。私たち世代のあこがれどれみちゃんはアニメの中でステーキになかなかありつけられなかったけれど、ドジも多いけれどいつもまっすぐで元気いっぱい。忘れそうになる心構えを肉を食って取り戻す日があってもいい。

社会人はその気があれば、“金銭と等価交換でいつだって肉ほおばって魔女に戻ろう”

 

【おわりに】

10選ぶ過程も、まとまったみなさんの作品を鑑賞するのも本当に楽しいのがこの企画。最近いろんな意味でエネルギーがなくて短歌を詠めなくなっていたので、いろんな人の色んな歌に触れたら少しは感覚が戻るかなあと思っています。(荒療治ではないと思いたい)今年もぼちぼち詠んでいきたいです!